「原状回復の費用相場が知りたい」

「原状回復はどの範囲まで行えば良いの？」

賃貸物件の経営において、このような疑問を持つオーナーの方も多いのではないでしょうか。住民が退去したあとに行う原状回復工事は、適正価格で行いたいですよね。

この記事では、オーナーと管理会社間やオーナーと入居者間での金銭トラブルを避けるために知っておきたい、原状回復の費用相場について解説します。また、原状回復のトラブルを防ぐための注意点も紹介しています。

原状回復工事の施工を予定している方は、ぜひ参考にしてください。

原状回復義務とは

原状回復義務とは、賃貸物件の契約において、契約終了または途中解約により退去する際に、借りた部屋を入居時の状態に戻して返す義務のことです。入居時に支払っている敷金や保証金が原状回復費用として充てられますが、足りない分は借主が退去時に支払わなければなりません。

原状回復については、国土交通省がガイドラインで次のように定義しています。

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損（損耗等）を復旧すること。」

つまり、住んでいるうちに自然に生じた損耗に対しては、借主に負担義務はありません。一方で、故意または過失が借主にある損耗に対しては、借主が原状回復の負担をしなければならないとされています。

原状回復の費用相場

借主側がガイドラインに明記されている「その他通常の使用を超えるような使用」を行った場合の、原状回復の費用相場について解説します。

原状回復工事の施工費用は、さまざまな条件によって変わるものです。今回は、間取り別・居住年数別・修復項目別のそれぞれに分けて原状回復の費用相場を紹介します。

ただし、必ずしも借主が全額負担しなければならないというわけではありません。

特に借主が長期間住んでいた場合は、借主による損耗か経年劣化かを見分ける必要があります。経年劣化や通常損耗の影響が大きい場合、原状回復の負担範囲については、ガイドラインに基づいて確認しましょう。

間取り別

まずは、間取り別の原状回復の費用相場です。請求額は、間取りが大きくなるほど増えていきます。

・ワンルーム、1K、1DK、１LDK：約5万円
・2K、2DK、2LDK：約8万円
・3DK、3LDK、4K、4DK、4LDK：約9万円

居住年数別

次に、借主の居住年数別の原状回復の費用相場です。居住年数が長くなるほど、建物の損傷が増えてしまうため、原状回復の費用は高くなります。

しかし、同時に築年数も経過しているので、経年劣化が原因となる場合もあります。そのため、居住年数が7年以降の場合は、最初の1〜3年に比べると費用の増加率は抑えられるようです。

・1～3年：約5万円
・4～6年：約6万円
・7年～：約9万円

修復項目別

原状回復の費用相場は、何を（どこの部分を）補修するのかによっても異なります。主な修復項目について紹介します。

・壁や天井のクロス張り替え
壁のクロス張り替えの相場は、約3〜4万円程度です。
クロスを張り替える際は、全面を交換するので、壁の面積によっても費用は変動します。また、タバコのヤニで天井まで変色している場合は、さらに追加で請求されます。

・壁や天井のボードの取り替え
壁や天井のクロスの中にある、ボードを取り替える相場は約3～6万円程度です。
破損の大きさによって費用は変動しますが、ボードの取り替えには工事が必要となるので注意が必要です。また、ボードを替えるとクロスも張り替えなければならず、さらに費用が追加されます。

・床のクリーニング
床材の汚れの相場は、約2～3万円程度です。
洗剤や薬品などの使用で落とせるような汚れの場合は、大規模な修繕工事は必要ありません。その代わりハウスクリーニングが必要です。汚れの数や範囲によって費用の変動はあるので、業者へ依頼する際にはしっかりと見積もりを確認しましょう。

・床材の張り替え
床材の張り替えの相場は、素材と面積によってかなり大きな変動があります。
傷やへこみなどがついてしまって、一箇所のみ床材を張り替える場合は、約1万円程度です。一方で、床全体を張り替える場合は、フローリングで約8〜12万円程度かかります。

・キッチンのクリーニング
簡単な掃除で落とせなくなってしまったキッチン汚れのクリーニングの相場は約2〜4万円程度です。
換気扇やコンロに付着した焦げや油は、その程度によって費用が変わってくるので、普段から汚れを取り除いておくようにしましょう。

原状回復のトラブルを防ぐために注意すること

原状回復に関する退去時の金銭トラブルはとても多いです。

おもに、金銭に関わる認識のズレが原因で、オーナーと管理会社との信頼関係の悪化にもつながります。ここからは、原状回復のトラブルを防ぐために注意することを3つ解説します。

1.ペットの飼育

賃貸物件でのペットの飼育には注意が必要です。

ペットを飼育していると、床に傷が付いたり、シミができてしまったりします。原状回復の費用負担は当然増えてしまうので、ペット不可にする物件も多いです。ペットに関しては、契約内容を明確にしておく必要があります。

2.DIYや塗装

DIYや自分で壁紙などの塗装を行う人は、注意が必要です。

エアコンやテレビの設置のためにビスなどでできた穴や、小さな画鋲の穴は原状回復の対象には含まれません。しかし、他の重量物を支える大きなネジ穴や釘穴など、基本的に自分で戻すことができないDIYや塗装は、原状回復の対象となります。

3.メンテナンス不足

借主が一般的な掃除や設備のメンテナンスを行っている限り、原状回復の対象にはなりません。

設備そのものに不良があった場合は、修繕義務があるのは貸主です。ただし、設備不良がわかった時点で借主側から貸主側へ通知する必要があります。通知をせずに使用または放置していた場合は「善管注意義務違反」となり、借主の原状回復の対象となります。

まとめ

原状回復義務と費用相場について詳しく解説しました。

原状回復は、ガイドラインに基づいて実施されます。そのため、傷や汚れの全てにおいて借主が負担しなければならないということはありません。

当社では、退去時の立会から原状回復工事まで一貫対応が可能です。

退去時には、状態の確認や退去費用の見積もり作成のため立会を行い、「なぜこの料金になるのか」「なぜこの施工が必要なのか」を明確に説明することができます。

説明不足によるトラブルを防ぐためにも、施工のプロにぜひご相談ください。